生成AIを導入した。社員にもアカウントを配った。研修も実施した。
それでも、会社全体ではなかなかAI活用が進まない。
そんなとき、
- 「社員のAIリテラシーが低い」
- 「現場が新しいツールを使いたがらない」
- 「もっとAIを使うように促した方がいい」
と考えてしまうことがあります。
しかし、本当に問題は社員側だけにあるのでしょうか。
最近の調査を見ると、企業のAI活用を左右しているのは、むしろ経営側の姿勢なのではないか、という興味深い結果が出ています。
経営層がAIを使わない企業の85.7%は、方針も推進体制もない
ラクスル株式会社が2026年5月29日〜6月1日に、従業員数2〜100人の中小企業の経営者・従業員300人を対象に実施した調査があります。
その結果、代表・役員がAIを「全く使っていない」企業では、85.7%がAI活用の方針も推進体制も整備していないことが分かりました。
一方、代表・役員がAIを積極的に活用している企業では、「方針も推進体制もない」と回答した割合は4.0%でした。
また、代表・役員自身がAIを「積極的に活用している」割合は27.2%で、役職別では最も低い結果となっています。
「全く使っていない」割合は22.8%で、こちらは役職別で最も高い結果でした。
この数字だけで、
「経営者がAIを使えば、必ず会社のAI活用が進む」
と結論づけることはできません。
しかし少なくとも、
会社としてAIをどう活用するのかという方針と、経営側の理解や実践には、強い関係がありそうです。
「社員にAIを使ってもらう」だけでは、会社のAI活用にはならない
企業が生成AIを導入するとき、最初に考えがちなのは、
- 「どのAIツールを導入するか」
- 「社員にどう使ってもらうか」
- 「どんな研修を行うか」
といったことです。
もちろん、これらも必要です。
しかし、それより前に決めなければならないことがあります。
会社として、AIに何をしてもらいたいのか。
ということです。
どの仕事をAIに任せるのか。どの情報をAIに理解させるのか。人とAIはどう役割分担するのか。AIが出した結果を誰が判断するのか。会社のどこからAI活用を始めるのか。
こうしたことが決まっていなければ、社員にAIアカウントを配っても、結局は一人ひとりが自分なりの使い方を探すことになります。
ある人は文章作成に使う。ある人は検索に使う。ある人は全く使わない。
便利ではあるけれど、会社として何が変わったのかは分からない。
Vol.01で取り上げた「生成AIを導入したのに、なぜ社内で使われないのか」という問題の背景には、こうした構造もあるのではないでしょうか。
では、経営者自身がAIを使いこなすべきなのか
ここで、
「それなら経営者こそChatGPTを使いこなさなければならない」
という話にしてしまうと、少し違うと私たちは考えています。
経営者が優れたプロンプトを書けること。最新の生成AIツールをすべて試していること。毎日AIとチャットしていること。
それ自体が、企業のAI活用の目的ではありません。
経営者に必要なのは、AIの操作技術というより、
AIを会社のどこで、どのように働かせるのかを考えること
ではないでしょうか。
人を採用するときも同じです。
経営者自身が営業担当者より営業が上手である必要はありません。
経理担当者より会計処理が速い必要もありません。
必要なのは、
- 「この会社にはどんな役割が必要なのか」
- 「その人に何を任せるのか」
- 「誰と協力して働いてもらうのか」
を決めることです。
AIについても、同じように考えることができます。
AIを「ツール」ではなく「役割」から考える
生成AIを会社に導入するとき、
「どのAIを使うか」
から考えるのではなく、
「会社のどの仕事をAIに任せたいか」
から考えてみる。
たとえば、
毎朝、売上やKPIを確認する。大量の問い合わせを整理する。社内の資料やルールを整理する。複数のシステムから必要な情報を集める。異常や変化を見つけて担当者へ知らせる。会議前に必要な情報をまとめる。
こうした役割を先に決め、その仕事を担当するAIを会社の中に配置する。
私たちは、こうした考え方を「AI社員」と呼んでいます。
AI社員という考え方では、社員全員がAIの専門家になることを前提にしません。
人には人の役割があり、AIにはAIの役割がある。
経営側が考えるべきなのは、
「社員にAIをどう使わせるか」ではなく、
「人とAIをどういう組織にするか」。
ということです。
AI活用は、IT導入ではなく組織設計になっていく
これまで企業のIT導入では、
システムを選ぶ。導入する。社員に使ってもらう。
という流れが一般的でした。
しかしAIは、少し性質が違います。
情報を理解する。状況を確認する。考える。報告する。人と対話する。
これまで人が担当していた仕事の一部を、AI自身が担えるようになってきています。
そうなると企業のAI活用は、単なるITツール導入ではなく、
「誰が、何を担当する会社にするのか」
という組織設計の問題になっていきます。
経営者がAIの専門家になる必要はありません。
しかし、
AIを会社の中でどう働かせるのかを決めることは、経営の仕事になっていく。
私たちはそう考えています。
CODATIが目指しているのも、社員にAIツールを配ることではありません。
役割を持ったAI社員を会社に迎え、人とAIがそれぞれの役割を持って働ける環境をつくることです。
AIを使う会社から、AI社員と働く会社へ。
そのためにはまず、
「どのAIを導入するか」ではなく、
「AIに、どんな仕事を任せたいか」
から考えてみてもいいのではないでしょうか。
「経営層がAIを使わない中小企業、85.7%が『AI活用の方針・体制なし』AI格差の鍵を握るのは、トップの理解と実践 ~中小企業のAI活用に関する実態調査 第1回~」
2026年7月9日
調査期間:2026年5月29日〜6月1日
対象:従業員数2〜100人の中小企業の経営者・従業員300人
調査方法:第三者機関によるインターネット調査
※調査結果は調査時点のものです。また、経営層のAI利用と企業のAI推進体制との関連を示すものであり、因果関係を断定するものではありません。
次回:社内AIチャットやRAGを導入すれば、AI活用は進むのか
会社の情報をAIに理解させるRAGや社内AIチャット。それは企業AI活用の重要な一歩です。
しかし、「会社のことを知っているAI」と「会社で働いているAI」は、同じなのでしょうか。
企画・監修:株式会社TOKIWAGI
