JOURNAL — Vol.06

AI社員が増えたら、人間の仕事はなくなるのか

大量の文書やデータをAIが処理し、変化に向き合うオフィスの人々を表現したイメージ

AIが人間のように文章を書く。資料をまとめる。データを分析する。問い合わせに答える。

さらに、AI自身が役割を持ち、会社の中で仕事をするようになる。

そう聞けば、当然一つの疑問が生まれます。

「それなら、人間の仕事はAIに奪われていくのではないか。」

AI社員という考え方について話すとき、避けて通れない問いです。

実際、生成AIが急速に進化して以降、

  • 「この仕事はAIに置き換わる」
  • 「ホワイトカラーの仕事がなくなる」
  • 「企業はAIによって大幅な人員削減ができる」

といった議論が繰り返されてきました。

では、生成AIが本格的に普及し始めてから数年。

実際の労働市場では、何が起きているのでしょうか。

AIの影響を受けやすい仕事ほど、雇用が減っているのか

米国Yale大学のThe Budget Labは、生成AIが労働市場に与えている影響を継続的に追跡しています。

2026年6月に公開された最新分析では、AIの利用状況と、職種ごとの雇用・失業の変化を比較しています。

その結論は、少なくとも現時点では、
AIの利用度と雇用・失業の変化との間に、明確な関連は確認できない
というものでした。

出典:The Budget Lab「Tracking the Impact of AI on the Labor Market」

さらに、AIの影響を受けやすい職種とそうでない職種を比較する分析でも、現時点ではAIによる明確な労働市場への影響を示す結果は得られていません。

出典:The Budget Lab「Tracking the Impact of AI on the Labor Market」

これは、

「AIは雇用にまったく影響しない」

という意味ではありません。

まだ変化が始まっていない可能性もあります。

雇用者数ではなく、仕事の中身が変わっている可能性もあります。

ある仕事では人を減らし、別の仕事では人を増やしていることで、全体では変化が見えにくくなっている可能性もあります。

重要なのは、

「AIに代替されやすい仕事だから、その職種の人がすでに大量に失業している」という単純な構図は、現時点のデータからは確認されていない

ということです。

「AIに影響される仕事」と「AIになくなる仕事」は同じではない

ここには、もう一つ重要な違いがあります。

「AIへの曝露が高い職種」という言葉があります。

これは、

その仕事の中に、AIによって効率化したり支援したりできる業務が多く含まれている

という意味です。

その職種そのものがなくなる、という意味ではありません。

The Budget Labも2026年2月の分析で、AIへの曝露は「AIによって消滅する仕事」を示すものではなく、AIが影響を与える可能性のある場所を示していると明確にしています。

出典:The Budget Lab「Labor Market AI Exposure: What Do We Know?」

たとえば営業という仕事を考えてみます。

提案資料を作る。過去の商談を調べる。顧客情報を整理する。メールを書く。会議内容をまとめる。

こうした仕事の一部はAIが担当できるようになるでしょう。

しかし、

顧客との関係をつくる。相手の表情や状況を読み取る。条件を交渉する。最終的な判断をする。責任を持つ。

という仕事まで、すべて同じように置き換わるとは限りません。

仕事がAIにさらされることと、人間そのものが不要になることは別の話です。

ただし、若い世代には変化の兆候も出ている

一方で、注意すべきデータもあります。

Stanford Digital Economy Labは、米国最大級の給与計算サービスの行政データを使い、生成AIの影響を受けやすい職種の雇用変化を分析しました。

その結果、AIへの曝露が高い職種で働く22〜25歳の若年労働者の雇用が、相対的に16%減少していることが確認されています。

一方で、同じ職種でも経験のある労働者の雇用は安定、または増加していました。

出典:Stanford Digital Economy Lab「Canaries in the Coal Mine? Six Facts about the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence」

Anthropicが2026年3月に発表した労働市場分析でも、高いAI曝露を持つ職種で失業率が体系的に上昇した証拠は確認されていません。

ただし、若年労働者については採用が鈍化している可能性を示す結果が出ています。

出典:Anthropic「Labor market impacts of AI: A new measure and early evidence」

つまり、現時点のデータをまとめると、

AIによって労働市場全体で大量失業が起きているとは確認できない。

しかし、

一部の職種や若年層の採用では、すでに変化の兆候がある。

というのが、より正確な見方でしょう。

なお、日本の若手社会人の意識にも、こうした不透明さは表れています。就活の教科書が25〜34歳の会社員を対象に行った調査では、54.5%が「AIの普及で将来のキャリアに対して不安を感じている」と回答しています。雇用統計上の変化がまだ限定的であっても、働く側の不安はすでに広がり始めていると言えるでしょう。

米国の最新調査として、The Budget LabのAIと雇用・失業に明確な関連は確認されていないという結果、Stanfordの若年労働者の相対16%減、Anthropicの失業率上昇の証拠なし・若年層採用鈍化の可能性を整理した比較図

AIは「人を減らす道具」なのか

企業側から見ると、AIの生産性向上は魅力的です。

これまで3人で行っていた仕事を、AIを使えば2人でできる。10時間かかっていた仕事が2時間になる。大量の資料確認をAIに任せられる。

そうなれば、

「では人を減らせるのではないか」

という発想が出てくるのも不思議ではありません。

しかし、私たちはここに大きな分岐点があると考えています。

AIによって生まれた時間を、
「人を減らす余力」と考えるのか。
それとも、
「人にしかできない仕事へ時間を戻す余力」と考えるのか。
です。

同じAIを導入しても、この考え方によって会社の姿は大きく変わります。

人がやらなくてもいい仕事は、確かにある

AIによって仕事が変わらない、と言いたいわけではありません。

むしろ、変わるべき仕事はたくさんあります。

毎朝、複数のシステムを開いて数字を転記する。大量のメールを読んで分類する。社内資料の中から必要な情報を探す。同じ形式の報告書を毎週作る。期限が近い案件を人が覚えておく。数字に異常がないか毎日目視する。

こうした仕事を、人がやり続けなければならない理由は少なくなっていくでしょう。

AIに任せられる仕事はAIに任せる。

しかし、それは、

その仕事をしていた人まで不要になる

という意味ではありません。

人には、

判断する。交渉する。創造する。責任を持つ。人と関係をつくる。新しい仕事を考える。

という役割があります。

AIによって、人がそうした仕事へ戻れるようにする。

これも企業AIの使い方です。

AI社員は、人間社員の「代わり」ではない

私たちがAI社員という言葉を使うのは、人間社員をAIに置き換えたいからではありません。

むしろ逆です。

人間社員がAIを操作するために、

プロンプトを覚える。毎回質問する。回答をコピーする。別のシステムへ転記する。またAIに質問する。

という仕事が増えてしまえば、

AIを導入したのに、人がAIのために働くことになります。

そうではなく、

AIにも役割を持たせる。

売上を見るAI社員。問い合わせを整理するAI社員。社内ナレッジを管理するAI社員。期限を確認するAI社員。

それぞれが自分の担当業務を持つ。

そして必要なときに人へ報告し、人と協働する。

人がAIを使うのではなく、人とAIがそれぞれの仕事をする。

これがCODATIで考えているAI社員です。

問うべきなのは「何人減らせるか」ではない

AIが進化すれば、企業の仕事の構造は確実に変わっていくでしょう。

なくなる作業もある。必要な人数が変わる仕事もある。新しく生まれる仕事もある。

その変化を否定する必要はありません。

しかし、企業が最初に考えるべき問いが、

「AIで何人減らせるか」

である必要もありません。

まず考えるべきなのは、

「人がやるべき仕事は何か」

そして、

「AIに任せるべき仕事は何か」

ではないでしょうか。

その境界を設計すること。人とAIの役割を決めること。そして、それぞれが協働できる会社をつくること。

AIの導入は、人員削減計画ではなく、
これからの会社の仕事を設計し直す機会
として捉えることもできます。

AIを使う会社から、AI社員と働く会社へ。

AI社員が増えることは、人間社員が減ることと同じではありません。

人にしかできない仕事を、人へ戻す。

そのためにAIが会社で働く。

私たちは、そんな関係を目指しています。

出典 The Budget Lab at Yale
“Tracking the Impact of AI on the Labor Market”
2026年6月15日 The Budget Lab

The Budget Lab at Yale
“What We Do and Don't Know About How AI is Affecting the Labor Market”
2026年5月7日 The Budget Lab

Stanford Digital Economy Lab
“Canaries in the Coal Mine? Six Facts about the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence”
2025年11月13日 Stanford Digital Economy Lab

Anthropic
“Labor market impacts of AI: A new measure and early evidence”
2026年3月5日 Anthropic

※現時点の労働市場データに基づく分析であり、AIが将来の雇用に影響しないことを示すものではありません。研究機関によって対象データ・AI曝露の定義・分析方法が異なる点にも注意が必要です。
Coming Next

次回:AIが仕事をする会社で、「上司」は誰になるのか

AIが単なる質問相手ではなく、自ら仕事を担当するようになったら——そのAIを、誰がマネジメントするのでしょうか。

次回は、AI社員が働く会社での「上司」の役割を考えます。

企画・監修:株式会社TOKIWAGI

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